tawara's blog

雑記。個人の見解です。

スクラムワークショップに参加して改めてカイゼン活動は楽しいと思えた

スクラムのワークショップに参加したので、イベントレポートを書く。

kentarotawara.hatenablog.com

知人のアジャイルコーチの呼びかけに応じた現役エンジニア10名は渋谷の某所のビルの会議室に10時30分に集まった。僕も含めて実務経験歴0-2年くらいのジュニアエンジニアが多い。

「それではみなさんには、2チームにわかれてもらいます」というアジャイルコーチの号令のもとにワークショップが始まった。アジャイルについて詳しい順に一列に並び、A,Bと組分けをしていく。なるほどー、知識の偏りをなくすには効果的だなー、と先頭で立ちながら思っていた。僕は普段からスクラム形式の開発をしているので、知識は少しばかりあるし、経験もあったからだ。一番詳しいかもしれない、とすこしばかり慢心した覚えがある。何と愚かな。

5人ずつに分かれての最初のワークは、さらに2グループに分かれて、スクラムガイドで紹介されているスクラムの要素をA4の紙に図で表現する、というものだった。ロール、イベント、アーティファクト(作成物)を図に描く、できれば価値基準と柱についても盛り込めるとなおよい、というルールだった。宿題として出されていたスクラムガイドに図はない、なので言葉の関連性を形作る必要がある。関連性を図で考える作業をすると、頭のなかでスクラムガイドの抽象的な文章をさらに抽象的にしないといけない。あーだこーだと話し合いながら知識を整理して図にする作業はけっこう楽しい。と言っても僕はペンを持つメンバーに、こうしたらわかりやすいかもね、と曖昧なボヤキをしているだけであった。

短いワークが終わると(この日のワークの要素のタイムボックスは長くても15分だったように思う)、今度は別の二人組に作った絵を見せてスクラムについて教え合うことをした。同じ文章を読んだはずなのに、描き方は微妙に?大胆に?違っていて面白い。その要素をその図で、その大きさで書くのか、という気づきがある。なるほど、そういう捉え方もありなのか、と。(余談だが、和歌にも精通する小説家の丸山才一は、昔の天皇の和歌をある歌集で読んだがどうしても理解できなかったらしい。その歌は本の右ページにあった。ところが同じ和歌集の別の出版社で読んだら、すんなりと理解できた。その和歌は左ページにあった。場所が変わるだけでも大事なのだ、みたいな文章をどこかで書いてた。実に余談だ。)

お互いに説明し終わると、FBをさらに各々の図に反映してから、今度は全員の前で発表した。ほぼ同じ内容をそれぞれ違った色合いで説明をする。それを聞いて理解を深める。最後にアジャイルコーチが、半袖半パンビーサン姿で、太い足、太い胴、太い腕でブラックコーヒーをがぶ飲みしながら、洗練された図をホワイトボードに書いて、改めて全体像を説明してくれた。

アジャイルコーチの絵

アジャイル師曰く、、、思い出しながら書いているので間違っている箇所があるかもしれない。瑕疵の全責任は筆者にある。

曰く、「スクラムは経験主義とリーン思考を根底に持っている。そして三本の柱を土台にしている。透明性、検査、適応。そしてその上に5つの価値基準がある。確約、集中、公開、尊敬、勇気。この基盤の上にスクラムは運営されることになる。まずはスプリントプランニングから始まる。日々のデイリースクラムがあり、スプリントレビューがあり、最後にスプリントレトロスペクティブが開催される。以上4つのスクラムイベントの容れ物としてスプリントが存在する。これがスクラムガイドで説明されるイベントである。

作成物は3つあり、まずはプロダクトバックログ。プロダクトに必要で、開発が待たれる要件を記述したチケット。その中から本スプリントで開発・見える化・触れる化するチケットを選ぶ。それがスプリントバックログ。最後にスプリントを通して開発したインクリメントがある。インクリメントをスプリントごとに積むとプロダクトと呼ばれるものになる。

プロダクトオーナー、スクラムマスター、ディベロッパーの3つの役割をスクラムメンバーは担うことになる。プロダクトオーナーは投資対効果に基づいて発言・行動することが求められる。売上・満足などの向上に向けて、必要な機能とは?、効果的な順番とは?、効果的な人員リソースの配分は?などを考えて行動する。(大変だ)。ディベロッパーは専門性を活かしてチケットをインクリメントに変える全工程に責任を負う。日々の進捗確認などもディベロッパーが担うことが多い。ベロシティの安定もディベロッパーの責任範囲(なるほど!)。スクラムマスターはチームの自己組織化に責任を持つ。組織がいかに学びが残るだろうか。なので、スクラムイベントを率先してファシリなどはせずにメンバーに任せることが多い。そして困っていたら手助けする。組織に学びが残るならスプリントを失敗させることも選択肢の一つにさえなる」

個人的に印象に残っているのは、POの責任だ。投資対効果(ROI: Return On Investment)に根拠をおいて行動する役割らしい。これはもやもやしていたPOとは?という疑問をすっといくらか紐解いてくれた。またスクラムガイドの内容からは外れてしまうが、ベロシティの安定化は開発者の責任、というのも知識の整理となった。僕は普段開発者としてチームに参画しているけれど、ベロシティの管理についてはSMがするものだ、と思っていて、そのように期待していた。なるほどなー。また、スプリントレトロスペクティブでは、カイゼンアクションをできるだけ具体的ですぐに取りかかれることを、2つくらいにしたほうがよいとのことだ。長期的なアクションはスクラムの枠を超えるのだろう。

師続けて曰く、「スクラムは難しく受けとめられることもありますが、整理してみればA4の紙に図で説明できるほど軽量フレームワークです」

確かになー。その軽量さを認識するためのワークだったのかー、なるほどなー、と思った。

残念ながら、ここまでが外部に公開できるワークショップの内容だ。開始から2時間くらいの内容に過ぎない。この座学をしたあとに、昼食を挟んで、わちゃわちゃするワークショップを2つほど行った。スクラムを経験できるワークショップだ。どちらも創造性を求められるし、夢中になれる一方で、スクラムを実践する難しさ、楽しさを体験できる内容だった。外部に共有できないのは、そのワークショップのネタバレを知ってしまうと試行錯誤の面白さがなくなってしまうからだ。

その2つのワークショップを振り返って学習したことをざっくりとまとめる。まず会話は大事だ。何をもってその行動を我々はしたのだっけ?何がよかったのだっけ?何がボトルネックだと思う?実際作業したらどうだった?などの会話から得られる合意や知識の精度が、カイゼンのアクションの質を決めるように思う。ただ深掘りしているだけでもよくない。時間は限られている。タイムボックスを意識しないとならない。これも普段の業務にすぐに活かせそう。僕のチームは議論を好むし、確認をしこたまするので時間があふれることが多い。リーン思考が必要のようだ。会話大事、カイゼン楽しい!

ワークショップの中で誰かがPOの役割を担う場面があった。その役割を担った人がスプリントを経ていくにつれてどんどんPOらしくなっていく姿を見ることができたことも大きな収穫だった。要件を詰める判断基準は先鋭化され、主体的に責任感を持っていく様を近くで見ていて、すげー、と思った。役割が人を育てる、ということなのだろうか。僕はPO役をしたくなかったので、その方に任せた。きっとその方はとても学びが多かったのだろうな。そういう場面で手を挙げる胆力が足りないなと反省をしている。うん、反省をしている。

と、夢中になって気づいたら18時を過ぎていた。みんなくたくたに疲れていた。ワークショップ全体の感想を発表しあって会は終わり飲み会へと場所を移した。

こういうような一日型のワークショップに参加するのは久々だったので刺激もあったし、職場のチームにも持って帰れることも見つかったので、大変に満足した会だった。疲れたことも思い出してしまう。

(了)