tawara's blog

雑記。個人の見解です。

山口蕗子『逃避の名言集』を読んだ。計画的に逃避しよう。

www.amazon.co.jp

新宿は紀伊國屋書店で山口蕗子『逃避の名言集』を買った。十代の頃は〇〇名言集とかの本をよく読んでいた記憶があるが、こういう本は読まなくなってしまった。前後脈絡なしに、言葉だけ切り抜いても深く味わえないからだ。とはいえパラパラとめくってみたところ、面白そうな言葉もあるし、何より女性の筆者(選者?)なのか、女性の作品からの引用が多く、そのほとんどが自分の知らない作品だったので買ってみた。

以下、面白かった名言とその感想。

「自分に疑いのない人」との会話は時間の無駄です 出典: 大庭みな子『続 女の男性論』の引用箇所の著者の要約

この言葉があったから本書を買ったともいえる。あんまり関わりたくないなーと思う人はこういう傾向にあると思う。言い切り、断定調の語り口の人の話をあまり聞きたくない。根拠といえばかじった知識や周りの友人の話からの推測とかの枠を出ないだろう。生きてて断定できることってほとんどないのでは、とすら思っている。

人生に必要なことは、日常生活からの逃げ場を作ること 出典: ウディ・アレンの映画『人生万歳』のインタビュー

無性にひとりになりたくなるときがあり、実際なんとかして実行する。満喫にいったり、空いてる喫茶店に行ったりする。人付き合いが苦手なわけではないけれど仕方がない。社会人として社交性が欠けているのかと密かに心配していたのだけれど、防衛本能としてそう行動しているのかもしれない。とにかく誰かにとやかく単独行動を避難されたら言い返す言葉のレパートリーが増えたのでよい。「しょうがいないよ、ウディ・アレンも言ってるもの」と。

独身を通すことも結婚も同性愛もすべて、同じように危険な選択なのです 出典: 室谷洋三編『アイリス・マードック 随筆・対談集』の引用箇所の著者の要約

切れ味鋭い言葉でお気に入り。マイノリティを心配・ケア・配慮するマジョリティという構図を土台から突き崩すほどインパクトがあって好きだ。何がどう危険なのかは、アイリス・マードックの本を読まねばいけないけれど、ふと自分の無意識に抱いていた態度を透明な刃でぶった切られる感覚はいい。そのために読書しているのだから。

いろんな作家、映画監督の名を知れるのもこういうオムニバス形式の本のよい点ですね。

(了)