tawara's blog

雑記。個人の見解です。

「ボートはボート、セックスはセックス」。人生32年で心に残った言葉は少なくない。冒頭の言葉はなぜか最近頭によく浮かぶ。村上春樹の文章にでてきた言葉だ。小説かエッセイかは忘れたし、著者自身の言葉か引用かも忘れた。とにかく20歳前後に出会った文章だ。10年近くも記憶の隅に保管されていた。それはそれ、これはこれ、という意味だ。大げさなことは何も言っていいない。なぜボートとセックスなのか。そのチョイスに惹かれてしまう言葉だ。日常の会話では使ったことはない。使うこともたぶんない。

「人生しょっちゃいなよ」。名前も知らない人に勢いよく背中を叩かれて言われた。20代半ばの頃に、愛媛は宇和島の小料理屋のカウンターで元東京のホテルで腕をならせた料理人に言われた。職場の元同僚が宇和島に就農した。はじめて小説を読んでくれた恩人だ。好きでたまに宇和島に弾丸旅行してみかん畑で農作業をしていた。その先輩はグルメで、すぐに地元の美味しいお店を見つけ、マスターと仲良くなっていた。おじさんと仲良くなる才能を持つおじさんが世には存在する。僕は例に漏れなくその頃人生というものに悩んでいた。会社を辞めてバイトしながら小説を書こうかいろんな人に相談していた。単に仕事に折り合いが付けれない肥大化した自我の成り果てだと振り返っては思うけど、それはまた別の機会に。ともかく、そのカウンターで先輩と飲んでいたら、酔っ払った料理人に絡まれたので人生相談をしたのだと思う。で、聞いてるのかよくわからない態度だったけど突然大声で「人生しょっちゃいなよ!!!」と背中をバシンと叩かれた。魂に雷鳴がとどろき、進むべき道がひらけた、わけではなかった。が、何かこう魂の芯みたいなところに響く暴力だった。その人も例にもれなく紆余曲折の人生だったようだ。悩める暗い面をした若者をカウンターで見かけたら僕も背中を叩けるようになりた。叩くためには人生を背負い込む気概と行動が必要だ。

「笑えるうちはなんとかなる」「道理を超えた状況に合わせて生きることは本当に消極的でしょうか」「関係者の幸せのため謎を解くのが名探偵」など思いつくが、また今度。

(了)